2017年2月15日水曜日

脳卒中患者の自立を促すための装具療法

久しぶりの投稿です。
年末年始は論文の執筆等でなかなか時間がとれなかったのですが、一段落したのでまた少しずつブログへの投稿を再開したと思います。

先日、当院が回復期リハ病棟を開設予定ということもあり、広島市であった回リハ学会に参加した。 3,000人も参加したと聞いて、地元広島県で行う学会でもたくさんの人が集まるんだなぁと少し誇らしく思った。

学会で興味深かったのは大高先生の特別講演であった。「回復期リハ病棟とは」ということを考えさせられるもので、活動を上げながら、いかに安全を管理するかという相反する命題を可能にするシステムが大事であるとの事だった。
これを装具療法で考えてみると、機能や能力の向上が図れるような治療的要素と安全で自立した生活が送れるような機能代償的要素のバランスが重要だろうと感じた(当たり前ではあるが…)。

今回は、自立した生活を促すための装具療法とはどんなものか再考したものを紹介したいと思う。

脳卒中患者の自立を促すための装具療法

 私の装具療法に関する考え方は、以前ブログで紹介したものとおおよそ変わっていはいない(詳しくはこちら)。私たちが行う動作や活動は、個々の能力と実施する課題、動作や活動が行われる環境によって変化する。そのため、能力や課題が大きく変わらない状態であっても、環境を整えることで、より多くの動作や活動が可能になる。環境因子は人的環境因子と物的環境因子に分けられ、ハンドリングは人的環境因子であり、杖や装具は物的環境因子である。病棟生活などで自立を促すということは、ハンドリングなどの人的環境因子を整えることができない環境であり、自立を促すためには装具などの物的環境因子を整えることが必須となる。
 また、装具療法には機能代償用装具と治療用装具という2つの利用目的があり、それぞれ目的が異なるため、特に急性期や回復期の初期段階においては、治療場面と生活場面で同じ装具を利用しないといけないわけではない。患者の自立を促しながら、機能や能力の向上を図る回復期病棟においては、機能代償的要素と治療的要素のバランスが重要になると思われる。

●片麻痺患者の歩行速度と体幹・下腿の可動範囲との関係●
 書籍 卒中片麻痺者に対する 歩行リハビリテーション の中で、片麻痺患者の歩行速度と体幹前後傾可動範囲や下腿部可動範囲との関係を調査した結果が示してある。(体幹前後傾可動範囲や下腿部可動範囲については下記図を参照)
 
結果、歩行速度が0.20m/s未満の患者下腿部可動範囲が小さく、体幹可動範囲が大きかった。歩行速度が0.20s~0.37m/sの患者下腿部可動範囲が小さく、体幹可動範囲が小さかった。歩行速度が0.38m/s以上の患者下腿部可動範囲が大きく、体幹可動範囲が小さかった
 これらの関係を図示したものを下記に示す。


 歩行速度と体幹や下腿の可動範囲との関係から、歩行能力向上に向けた介入の戦略を考えると、歩行速度が0.20m/s程度までの低速者体幹の可動範囲を減らすことを、0.20m/s以上の中速者~高速者下腿の可動範囲を増やすよう介入するとよいと思われる。

 また、これらの関係をバランス戦略で考えると、0.20m/s程度までの低速者は足関節戦略がほとんど行えず股関節戦略によってバランスをとっている状態であり、0.20m/s以上の中速者~高速者足関節戦略によってバランスをとることができているが、安定性限界の範囲が異なる状態であると思われる。そのため、バランスの側面から治療方針を考えると、低速者に対しては足関節戦略を促すことを、中速者~高速者に対しては足関節戦略の安定性限界を広げ、難易度の高いバランス課題を足関節戦略で行えるよう促すことが必要となると思われる。(治療的要素)

●装具の処方●
 以上の方針を基に、病棟生活で利用する装具の処方について考えてみる。低速者に対しては、体幹の安定性を促すことを目的に、足関節の自由度(必要に応じて膝関節の自由度も)が制限できる装具を、中速者~高速者に対しては、足関節戦略の安定性限界を広げることを目的に徐々に足関節の自由度を広げ遊動に導けるような装具、必要に応じて制動や動きの補助を行えるような機能的な装具を処方する必要があると思われる。

 いずれにしても、患者の歩行能力に応じて関節の自由度をコントロールし、何の学習を促すか明確にしながら、安全と活動のバランスをうまくとれるような装具を処方する必要があると思われた。


 本日はここまで。


続きはまた次回。。。

書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法

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