2016年4月18日月曜日

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書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法 

2016年4月17日日曜日

ボバースの文献④:現代の脳卒中患者に対するボバースコンセプトとは?(理学療法士に対する意識調査)

引き続き、ボバースに関する文献を紹介したいと思う。

 今回の文献は、現代の脳卒中患者に対するボバースコンセプトがどのように変化しているかを明らかにするために行われた研究を記したものである。ボバースコンセプトは、その時代の神経科学を背景とする臨床推論に基づき、評価・介入を行っており、神経科学の発展と共にその基盤となる理論的な背景も変化している。今回はボバースの講習会に参加したことのある理学療法士を対象としたフォーカスグループインタビューを行い調査を行った。

※フォーカスグループインタビューとは、特定のテーマに焦点を当て、特定の対象を集めて行うグループインタビューであり、質的な情報把握を行うために用いられる。グループで行うことにより単独インタビューでは得られない、奥深くそして幅広い情報内容を引き出すことが可能となる。

現代の脳卒中患者に対するボバースコンセプトとは?(理学療法士に対する意識調査)

 今回の研究は、理学療法士と共にボバースコンセプトの理論的な背景として認められているものは何か、また、1990年に発表された成人片麻痺に対するボバースコンセプトに基づいた評価・治療について示した書籍に記されたものからどのように変化したのかを調査することを目的とした。

方法
 フォーカスグループインタビューに参加した理学療法士は、過去3年以内にボバースの基礎講習会もしくは上級者講習会に参加した8名であった。彼らの経験年数は平均9.4年(5-15年)であった。参加者は、興味を持つ領域により2つのグループに分けられた。1つは、神経科学に興味を持つグループ(グループA)で、もう1つは、高齢者に興味を持つグループ(グループB)である。グループAは、5人で構成されており、その中にはボバースのインストラクター1名とインストラクター候補生1名が含まれた。しかし、インストラクター候補生(セラピストC)はグループインタビューを行う日に参加できなかったため、事前に単独のインタビューが行われた。グループBは、3名で構成された。
 ディスカッションは、いくつかのボバースコンセプトの論文に基づいて行われた。

結果
 各グループで議論されたキーワードは、正常動作と筋緊張のコントロール、ファシリテーション、運動学習、ボバース概念についてであった。各ワードについて議論された内容について下記に示す。

【正常動作】
 以前は、神経発達学的な評価・治療が行われていた。しかし、グループAは、現在は子供の発達ではなく、正常運動と神経の可塑性が治療の基盤となっていると主張した。神経の可塑性は、損傷後の成人の中枢神経システムの変化を指しており、この変化は、患者が環境やハンドリングなどから受け取る情報によって良いものにも悪いものにもなると述べられた。グループBは、正常動作も活動を通して促通することが重要であると主張した。セラピストCは、反射抑制パターンによる筋緊張の抑制から、姿勢のセットに変化したと主張した。また、どのグループも筋骨格系のアライメントを適正に整えることが重要であると述べた。

【筋緊張のコントロール】
 筋緊張をコントロールすることは、すべてのセラピストにとって正常動作を促通するための重要なポイントであった。グループAは、活動だけでなく、正常動作に必要な構成要素の治療の必要性について主張した。グループBは、患者が動きやすくなる場合、代償の許容が必要であると述べた。すべてのセラピストは、過去に筋緊張をコントロールすることに対する偏りがあったと感じていた。現在も、筋緊張のコントロールは重要であるが、動作の促通と共に併用されている。
「筋緊張が正常化されることが、自然で自由な動きを達成するための唯一の方法であるが、異常な筋緊張をコントロールする最善の方法は、実際により正常な動作を促通することである。筋緊張をコントロールするためだけに多くの時間を費やすことはない」

【ファシリテーション】
 今までは、多くの時間を筋緊張を整える時間に費やしており、なかなか活動へ移らなかった。しかし、現在では、中枢神経システムの可塑的な変化をもたらすためには活動が必要であるとすべてのセラピストが同意した。最適な運動を促通する際、適切なアライメントを整えるためにハンドリングや他のセラピストのサポート、環境調整などが必要であった。ファシリテーションを行う際には、セラピストが段階的にHands onから離脱し、患者自身にコントロールしてもらうよう促す必要があった。
 ファシリテーションにおける感覚入力に関して、グループAでは、言語的な入力は、強化や不必要な活動をやめる際に固有感覚入力の補助的手段として利用されており、視覚入力も補助的な扱いであると述べられた。グループBでは、すべての感覚入力(Hans onによる入力および視覚や言語による入力)が運動の促通のために用いられることに同意したが、セラピストのHands onによる感覚入力が重要であることが主張された。
 すべてのグループで、全課題とは別の姿勢で構成要素のファシリテーションを行うことに同意したが、最終的には歩行や対象物へのリーチのような全課題を通して構成要素の結合を図る必要があることに同意した。患者の目標となる活動を達成することが治療の最終目標であった。
「数年前までは、構成要素の準備が整うまでは誰も歩かさなかった。しかし、現在は、構成要素の準備が整う魔法の日まで歩行を延期することはなく、歩きながらファシリテーションを行うだろう」

【運動学習】
 介入によって患者が新しい動作方法を学習していなくても、低いレベルで神経回路にアクセスしていると述べられた。ボバースコンセプトにおいて、重要な構成要素を強化するために、多くの異なった課題を経験させる機会を作ることが重要であった。運動コントロールを強化するために、神経回路に反復してアクセスすることが重要であったが、それは必ずしも同じ動作を行うことを意味していなかった。例えば、歩行に必要な構成要素は、臥位や座位、立位、プローンスタンディングなどで行われるかもしれない。多くの異なった姿勢や課題で正確な構成要素を反復することが重要であった。しかし、最終的には、目標となる課題を通して、構成要素の結合を図る必要があった。

【ボバース概念】
 1990年以来ボバースコンセプトがどのように発展してきたかについて多くの時間を費やした。セラピストは、いくつかの文献に記載されている内容について議論した。それは、神経発達的な順序や運動の回復方法、近位に対する遠位のコントロール、課題と構成要素の関係性、治療のキャリーオーバー、歩行補助具と装具であった。神経発達学的な順序での回復はもはや支持されていなかった。すべてのセラピストは、近位の安定だけでなく、近位と遠位どちらとも促通が必要であることに同意した。正常動作の構成要素の促通を行うことは、現在も重要であったが、最終的には、目標となる課題を通して、構成要素の結合を図る必要があった。キャリーオーバーを成し遂げるためには、治療以外時間の動き方・生活の仕方について患者にアドバイスをしなければならないと述べられた。装具や歩行補助具の利用は、より正確な動きを得るためにそれらを利用することに同意した。また、装具や歩行補助具の利用が治療の失敗であるという見解をしてはならないという事に同意が得られた。

まとめ
 本研究では、ボバースコンセプトが1990年以降どのように変化したかについて調査した。現在のボバースコンセプトでは、反射抑制パターンや神経発達学的な知見は利用されなくなっており、神経の可塑性などの神経科学的な知見が利用されている。また、筋緊張のコントロールは、現在も重要な要素であるが、動作の促通が常に併用されている。ファシリテーションには、Hands onによる徒手的な誘導に加えて、言語入力や視覚的な入力などすべての感覚入力が利用されている。以前は、活動のための準備に多くの時間を費やしていた。現在も重要な要素であるが、目的指向的な活動が各治療において常に導入されており、課題指向型アプローチはボバースコンセプトの重要な要素となっている。装具や歩行補助具の利用に関しても、より正確な動きを得るためにそれらが利用されている。

参考文献
Lennon S, Ashburn A:The Bobath concept in stroke rehabilitation: a focus group study of the experienced physiotherapists' perspective.Disabil Rehabil. 2000 Oct 15;22(15):665-74.

以上、ボバースコンセプトがどのように変化したのかを示した文献を紹介した。


本日はここまで。

続きはまた次回。。。

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