2017年5月28日日曜日

運動学習③

引き続き、運動学習について。
今回は、脳科学における運動学習について少しまとめていきたいと思う。

 運動学習は3種類に分類される。それは、教師なし学習教師あり学習強化学習である。今回は教師あり学習と強化学習についてまとめていく。

●教師あり学習と強化学習
 教師あり学習は、目標となる運動があって、それと同じ運動を行おうと比較・修正する方法である。この学習は、主に小脳により調整が行われ、「意図した運動」「実際に行った運動結果」誤差を検出し、長期抑圧に基づいてその誤差を減少させる「誤差学習」である。
 強化学習は、行った運動結果がもたらす成功(報酬)をできるたけ増やしていこうとする方法である。この学習は、主に基底核により調整が行われ、「期待される報酬の量」「実際に得られた報酬の量」誤差(予測誤差)に応じて興奮し、シナプス伝達効率を向上させるものである。



●強化学習●
 強化学習が行われるためにはドパミン作動系が働く必要があり、ドパミン作動系の活動が大きくなればシナプスの伝達効率を向上させることができるとされている。これに関する研究は、動物実験により行われているものが多い。よい行動をとればエサを与える。エサが与えられれば満足感が与えられ、その時にドパミンが放出され、行動が強化される。イヌがお手を覚える際に行われるものがまさに強化学習である。この原理は脳卒中患者に対しても同様であるだろうか?このことに関連して、ドパミンの前駆物質であるレボドパと理学療法の組み合わせが脳卒中後の運動機能回復に関与するかどうかを調べた研究がある。その結果、レボドパと理学療法を組み合わせたアプローチを行った群の方がプラセボ群と比較し有意な運動機能の回復を認めたとされており、ドパミン作動系の活動を促すことにより、脳卒中後の運動機能の回復を促すことが示されている。

 それでは、薬物を用いずドパミン作動系の活動を促すためにセラピストはどうしたらよいだろうか?健常人を対象にした研究において、金銭を与えた場合に良好な学習が得られ、線条体等の興奮性を認めたことが報告されている(Wachterら 2009)。この研究において罰金を課した群はよい学習が得られなかったと報告されている。また、食べ物を報酬とした場合、肥満女性は一般女性や男性と比較し、学習の成績が低下したとの報告がある(Zangら 2015)。これらの報告より、罰を与えるよりも報酬を与えた方がよい学習効果を示し、与える報酬も個人や環境因子の違いよって価値が異なると思われる。しかしながら、リハ介入ごとに金品を与えることは現実的には不可能である。金品を与えず、学習を促す方法を調査した研究を紹介する。この研究は、褒めることが歩行能力の改善に寄与するかどうかを調査したものである。結果、褒めた群は褒めなかった群に比べ歩行速度が有意に改善したとされており、褒めることが報酬として働き、運動学習を促したことを示唆している。そのため、リハ中にドパミン作動系の活動を促し、運動学習を促進するためには良い結果が出たタイミングで褒めることが重要であると思われる。

 もう一つ強化学習を促すための重要な要素がある。それは課題の難易度である。サルを用いた実験において、報酬が出る確率を変動させることでドパミン作動系の活動がどのように変化するかを調査した研究がある。この研究では確率が50%となる課題の時に最もドパミン作動系の活動が大きかったとされている(Fiorilloら 2003)。ヒトを対象とした研究では、もう少し高い確率の方がよいとされるものもあり、少し難しいくらいの課題(50%~70%)に設定することが重要と思われる。

●教師あり学習●
 教師あり学習は、「意図した運動」と「実際に行った運動結果」の誤差を検出し、長期抑圧に基づいてその誤差を減少させる「誤差学習」である。ここで小脳で行われる長期抑圧の仕組みについてまとめたいと思う。
注)図中に示すは興奮性を、は抑制性を示す
①まず、大脳皮質から運動指令が出されると、苔状線維を通じて小脳核へ情報が送られ、小脳核の細胞を興奮させる。小脳核の細胞が興奮することにより、シナプスの伝達効率を向上させ、その運動が起こりやすいように作用する。


②同時に大脳皮質で作られた運動プログラムは、平行線維を通じてプルキンエ細胞に情報が送られる。

③運動が実行されると筋・骨格系からの感覚情報が、登上線維を通じてプルキンエ細胞に送られる。

④プルキンエ細胞で大脳皮質で作られたプログラムと実際の運動によって産出された感覚情報の誤差を算出し、誤差分だけ小脳核の活動を抑制する。

⑤小脳核の細胞は、活動しすぎている神経線維を抑制し、シナプスの伝達効率を低下させることで誤差を修正する。加えて、その情報は視床を介して滞納皮質へ送られ、プログラムの修正が行われる。

 このように、長期抑圧に基づいて誤差を減少させていき、最終的には抑制しなくても運動が実行できるように調整をしていく過程が教師あり学習である。


 以上、3回にわたり運動学習についてのまとめをおこなった。
 我々が行うリハビリテーションは、①評価を行い、②問題点に対してセラピー場面で治療を行いパフォーマンスの変化を図る。③そして、セラピー以外の場面や長期的にパフォーマンスの変化が図れるよう関わることが大切であり。①のためには姿勢・運動コントロールが、②のためにはハンドリングやその他さまざまな介入方法(ハンドリングのためには感覚システムの理解が必要)が、③のためには運動学習の理解が重要である。これらの3つのシステムを常に考えながら治療を行うことが大切であると思う。



本日はここまで。

続きはまた次回。。。


2017年5月21日日曜日

運動学習②

 引き続き、運動学習についてのまとめを行いたいと思う。

 まずは、運動学習についてのおさらいから。
 我々が運動を行うと身体内部の感覚受容器(関節受容器・皮膚感覚・前庭覚・筋感覚など)により感覚情報が取り込まれる。しかし、全ての感覚情報を脳内で処理すると情報量が多すぎて脳はパンクしてしまう。それを避けるため、注意を向けられた感覚情報のみ脳内に貯蔵するようコントロールされており、この情報を基に内部モデルとの比較照合を行い、新たな運動プログラムが生成される。注意を向けるための補助的な役割として外在的フィードバックを与えることがあり、それは同時フィードバックと呼ばれる。同時フィードバックは、動作前や動作中に行われるもので、動作目標の焦点化を図る際に活用される。同時フィードバックには、自分の身体そのものに注意を向ける内的焦点(internal focus)身体外の環境や道具へ注意を向ける外的焦点(external focus)がある。


●焦点化の違いが運動学習に与える影響●
 では、同時フィードバックにおける内的および外的の焦点化の違いにより、運動学習に違いがあるのだろうか?ここでゴルフのアプローチに関する研究を紹介したいと思う。この研究は、ゴルフの低技術者と高技術者に対して内的焦点化および外的焦点化を行った際に学習効果に違いがあるかどうかを調査したものである。結果としては、低技術者に関しては、関節角度や体の動きに焦点を与えた方がよい成績を示し、高技術者に関しては、打ったボールの軌道や距離などの外部に焦点を与えた方がよい成績を示した。また、高技術者に関しては、関節角度や体の動きに焦点を与えた場合、低技術者と同等の成績となり、成績が悪化したと報告しており、初心者に対しては内的焦点化が効果的であり、熟練者に対しては内的焦点化を行うとパフォーマンスが低下する可能性を指摘している。

 また、ファンクショナルリーチを用いて内的および外的の焦点化の違いにより、運動学習に違いがあるかを調査した研究もある。この研究では、内的および外的の焦点化を行う順序の違いが運動学習に与える影響について調査されている。結果、外的焦点化を図った後に内的焦点化を図った群は、個人差なくパフォーマンスの向上を認めた。内的焦点化を図った後に外的焦点化を図った群は、著しくパフォーマンスの向上が図れたものと、向上が図れなかったものに二分化された。向上が図れなかったものに関しては、内的焦点化を図ったにもかかわらず、外部環境に注意を払いながら動作を行っていたとの事であった。つまり、内的焦点化を図ったとしても、理解や注意が悪く、身体に注意を向けることができなければ学習を図ることが難しいということであろう。論文内でも、外的焦点化は個人差が少なくパフォーマンスの向上が図れる手法であり、内的焦点化は適切な理解を促せた場合に著しくパフォーマンスを高めることができる手法であることを指摘している。

 もう一つ、ファンクショナルリーチを用いた研究で、同時フィードバックと最終フィードバックの組み合わせによって学習効果に違いがあるかを調査したものがある。最終フィードバックとは、動作終了時に課題結果やパフォーマンスの特徴を伝えるものであり、運動記憶を顕在化する役割を担っている。研究の結果、内的焦点化を図った場合は、パフォーマンスの特徴を伝えた方が学習効果が高く、外的焦点化を図った場合は、課題結果を伝えた方が学習効果が高かった。つまり、同時フィードバックの情報と最終フィードバックの情報は類似したものの方が学習効果が高いということである。
 

 以上をまとめると・・・

 ここで、セラピストが行うHandlingは学習にどのような効果を与えるのかを考えてみる。Handlingは、筋の出力やタイミング、筋感覚閾値のコントロールを行うことで運動パターンを変化させる効果がある。つまり、身体内部の情報を変化させ、身体内部に注意を向けることで課題の焦点化を図る効果があると思われる。Handlingの効果を高めるためには、身体内部に焦点化を図るような声かけやパフォーマンスの変化を伝えることが必要と思われる。




本日はここまで。

続きはまた次回。。。





2017年5月19日金曜日

運動学習①

今回からは運動学習についてのまとめを行いたいと思う。

●運動学習とは?●
 学習はさまざまな研究領域で扱われるテーマである。それぞれの領域で定義は異なるが、今回は行動科学における運動学習に基づいてまとめていきたいと思う。行動学習的な運動学習の定義では、「運動学習は練習や経験に基づく一連の過程であり、結果として技能的行動を行いえる能力の比較的永続的な変化をもたらすものである。」とされている(セラピストのための運動学習ABCより)。運動学習が練習や経験に基づく一連の過程であるということは、ある運動の学習において、どのような練習や経験がその学習に寄与したかという因果関係の特定ができる過程のみが運動学習ということになる。つまり、子どもの正常運動発達などは運動学習からは除外される。また、運動学習が比較的永続的な変化をもたらすものであるということは、セラピー場面でパフォーマンスの変化が起こっても、セラピー以外の場面や翌日まで変化が持続しないもの(Carry overしないもの)は運動学習が成立したとはみなされないということである。

●運動の学習過程●
 我々が運動を学習する過程を考えてみる。我々がある運動を行う際は、脳で運動のプログラムが生成される。この運動プログラムは筋骨格系に動く指令を出すと共に、脳内に運動記憶として貯蔵される(内部モデル)。運動が行われると身体内部の感覚受容器(関節受容器・皮膚感覚・前庭覚・筋感覚など)により感覚情報が取り込まれる。この身体内部の感覚情報は、内在的フィードバックと呼ばれ、この情報を基に内部モデルとの比較・照合が行われ、誤差があれば修正し新たな運動プログラムを作成する。つまり、運動学習とは内在的フィードバック情報に基づき、内部モデルとの比較・照合を行い新たな運動プログラムを生み出す過程のことである。治療中にセラピストが与える「(荷重練習中に)○○kg体重をかけれています。」や「(歩行練習中に)足がよく上がっています。」などの結果の知識(knowledge of  results;KR)パフォーマンスの知識(knowledge of performance;KP)などの外在的フィードバック情報は学習対象の焦点化を図ったり、顕在化を図るための補助的な役割として働く。

 また、運動を学習する過程は、課題の性質を理解し、何をどうすればよいか、どんな結果が出るとよいかを考える認知段階から、さまざまな方法を試し、比較照合をすることでより効率的な動きへ進める連合段階、学習が完成し、潜在的な意識によって運動の調整を行う自動化段階を経る。学習の認知段階においては、学習すべき課題の焦点化を図ったり、結果の顕在化を図るため外在的フィードバックが必要となるが、外在的フィードバックが頻繁に与えられると学習が外在的フィードバック情報に依存してしまい、自動化に進めなくなってしまうこともある。潜在的な意識によって運動を調整するためには、外在的フィードバックを減らす必要がある。

 ここでキーボードをブラインド・タッチで入力する課題を考えてみる。私は、ブラインド・タッチで入力することができず、常に手元を見ながら、打ち間違えがないか確認を行いながら入力をしている。私のようにキーボードを見ながらでなければ入力ができないものが、ブラインド・タッチで入力できるようになるためには、手元を見て結果を確認するという外在的フィードバック情報減らす練習が必要となる。このように、運動学習を進めるためには、外在的フィードバックを減らす必要がある。

●フィードバックの頻度と運動学習●
 上記で説明した通り、運動試行全てで外在的フィードバックを与える(100%FB)よりも2試行に1回(50%FB)や4試行に1回(25%FB)などのように外在的フィードバックの頻度を削減した条件で練習を行った方が運動学習が得られやすいとされている。その理由としては、数試行を反復して、運動イメージを明確にしてから外在的フィードバックを受ける方が比較照合が行いやすく、過剰な修正を防ぐことができる。また、外在的フィードバックを与えすぎると、学習者が外在的フィードバックに依存的になり、能動的な処理が行われなくなるためだとされている。


●まとめ●
以上のまとめを下記に示す。




本日はここまで。

続きはまた次回。。。


2017年2月22日水曜日

最近思うこと…

以前書いたブログ(ボバースアプローチと整形外科的アプローチの比較)で紹介した論文に対するLetter to the editorをもとに、私のブログに対してNegativeに書かれたブログがあった。今回はそこで紹介されていたLetter to the editorを紹介したいと思う。
ちなみに、Letter to the editorとは雑誌で発表された論文に対して、反論などの意見を述べるために出された「意見書」のようなものである。

Letter to the editor
 私はこの学術誌に掲載されている論文の質に感銘を受けている。しかしながら、Wangらの最近の論文に関しては、私の懸念を表現するために意見書を書かなければならない。
 この論文全体を通して、著者は初期評価時と最終評価時の差(利得)を治療評価の指標としている。このこと、特に非線形転帰尺度に由来するデータに利得を利用することは誤りではないかと思う。例えば、MASに利得が利用されている点である。この転帰尺度は、低い点数は非常に簡単なものであり点数を取りやすいが、点数が高くなるにつれて難易度が高くなり、点数が上がりにくい性質がある。これにより、床面効果や天井効果を予防するようにデザインされている。実際、多くのセラピストは、患者が最高点を出すことは難しいコメントしている。論文の中の表2に示される相対的な回復において、MASは整形外科的介入を行った群は23.3から25.5に増加し、ボバース概念に基づいた介入を行った群は、17.9から24.0に増加している。それぞれの利得は、整形外科的介入を行った群は2.0で、ボバース概念に基づいた介入を行った群は6.1であり、ボバース概念に基づいた介入を行った方が3倍近く改善したことを示唆するデータである。しかしながら、2つの理由から誤りを感じる。1つ目は、初期評価時の点数において、ボバース概念に基づいた介入を行った群のMASの点数が非常に低かったことである。2つ目は、最終評価時のMASの点数は整形外科的介入を行った群の方が高かった点である。これと同じことがBBSの分析にも言える。点数の変化量(利得)の比較は、線形尺度でさえ最終評価時の点数の比較よりも統計的に有意差を示しやすく、治療の違いを誇張しやすい。そのため、私はほかの手段でデータを分析するよう指導を受けたことがある。例えば、最終評価時のデータの分散分析を行うなどである。今回、通常示されるこのようなデータが示されていないように思われる。
 この点から今回意見を申し出た。痙縮患者に対するデータに関して、有意差が強く表れているようであるが、私は厳密な分析を行うと統計的に有意な効果を示さなかったのではないかと考える。



参考文献
Mepsted R:The recent article by Wang et al. Efficacy of Bobath versus orthopaedic approach on impairment and function at different motor recovery stages after stroke: a randomized controlled study.Clin Rehabil. 2006 Feb; 20(2): 183.

 最近学会などに参加して思うことは、EBMに基づくリハビリテーション重要性が求められてから、RCTによる研究やシングルケーススタディーにおいてもABAデザインによる研究が増え、治療方法の有効性を示す発表が増えていると思う。このような研究や発表は大変重要であるとは思うが、「症例数が・・・」や「統計学的処理が・・・」、「両群間のベースラインが・・・」など、方法論でその効果についてNegativeに捉えられることも少なくない。ましてや、今回のようにその分野に精通した研究者による査読を受けた論文でさえ、同様の指摘を受けている。私も学会等で発表することがあるが、私のように研究に関する知識が乏しいものが、特定の治療方法に対する効果についての研究や発表を行うことの意味について疑問に思うことがある。最近思うことは、私のように臨床で働いてるものは、患者や方法の選定に難渋する研究を行うよりは、症例1例でもよいので症例報告を大事にすることが重要のように思う。現在は科学的根拠のある治療方法がたくさん報告されているが、その研究において適応外とされているものや、復職などの活動・参加に対するアプローチに関しては方法が確立されていないものもある。そのような患者に直面したときに、現在報告されている方法の中から効果がありそうな方法を探ったり、また、さまざまな方法を組み合わせたりしながら、患者の目標に対してアプローチを行った結果を報告することが臨床家としては大切ではないかと思う。目の前の患者に対してなにができるか?そして、その結果がほかの患者にどう生かせるか?そういった観点からの研究や発表が臨床家としては大切だと思う。


 本日はここまで。


続きはまた次回。。。

2017年2月15日水曜日

脳卒中患者の自立を促すための装具療法

久しぶりの投稿です。
年末年始は論文の執筆等でなかなか時間がとれなかったのですが、一段落したのでまた少しずつブログへの投稿を再開したと思います。

先日、当院が回復期リハ病棟を開設予定ということもあり、広島市であった回リハ学会に参加した。 3,000人も参加したと聞いて、地元広島県で行う学会でもたくさんの人が集まるんだなぁと少し誇らしく思った。

学会で興味深かったのは大高先生の特別講演であった。「回復期リハ病棟とは」ということを考えさせられるもので、活動を上げながら、いかに安全を管理するかという相反する命題を可能にするシステムが大事であるとの事だった。
これを装具療法で考えてみると、機能や能力の向上が図れるような治療的要素と安全で自立した生活が送れるような機能代償的要素のバランスが重要だろうと感じた(当たり前ではあるが…)。

今回は、自立した生活を促すための装具療法とはどんなものか再考したものを紹介したいと思う。

脳卒中患者の自立を促すための装具療法

 私の装具療法に関する考え方は、以前ブログで紹介したものとおおよそ変わっていはいない(詳しくはこちら)。私たちが行う動作や活動は、個々の能力と実施する課題、動作や活動が行われる環境によって変化する。そのため、能力や課題が大きく変わらない状態であっても、環境を整えることで、より多くの動作や活動が可能になる。環境因子は人的環境因子と物的環境因子に分けられ、ハンドリングは人的環境因子であり、杖や装具は物的環境因子である。病棟生活などで自立を促すということは、ハンドリングなどの人的環境因子を整えることができない環境であり、自立を促すためには装具などの物的環境因子を整えることが必須となる。
 また、装具療法には機能代償用装具と治療用装具という2つの利用目的があり、それぞれ目的が異なるため、特に急性期や回復期の初期段階においては、治療場面と生活場面で同じ装具を利用しないといけないわけではない。患者の自立を促しながら、機能や能力の向上を図る回復期病棟においては、機能代償的要素と治療的要素のバランスが重要になると思われる。

●片麻痺患者の歩行速度と体幹・下腿の可動範囲との関係●
 書籍 卒中片麻痺者に対する 歩行リハビリテーション の中で、片麻痺患者の歩行速度と体幹前後傾可動範囲や下腿部可動範囲との関係を調査した結果が示してある。(体幹前後傾可動範囲や下腿部可動範囲については下記図を参照)
 
結果、歩行速度が0.20m/s未満の患者下腿部可動範囲が小さく、体幹可動範囲が大きかった。歩行速度が0.20s~0.37m/sの患者下腿部可動範囲が小さく、体幹可動範囲が小さかった。歩行速度が0.38m/s以上の患者下腿部可動範囲が大きく、体幹可動範囲が小さかった
 これらの関係を図示したものを下記に示す。


 歩行速度と体幹や下腿の可動範囲との関係から、歩行能力向上に向けた介入の戦略を考えると、歩行速度が0.20m/s程度までの低速者体幹の可動範囲を減らすことを、0.20m/s以上の中速者~高速者下腿の可動範囲を増やすよう介入するとよいと思われる。

 また、これらの関係をバランス戦略で考えると、0.20m/s程度までの低速者は足関節戦略がほとんど行えず股関節戦略によってバランスをとっている状態であり、0.20m/s以上の中速者~高速者足関節戦略によってバランスをとることができているが、安定性限界の範囲が異なる状態であると思われる。そのため、バランスの側面から治療方針を考えると、低速者に対しては足関節戦略を促すことを、中速者~高速者に対しては足関節戦略の安定性限界を広げ、難易度の高いバランス課題を足関節戦略で行えるよう促すことが必要となると思われる。(治療的要素)

●装具の処方●
 以上の方針を基に、病棟生活で利用する装具の処方について考えてみる。低速者に対しては、体幹の安定性を促すことを目的に、足関節の自由度(必要に応じて膝関節の自由度も)が制限できる装具を、中速者~高速者に対しては、足関節戦略の安定性限界を広げることを目的に徐々に足関節の自由度を広げ遊動に導けるような装具、必要に応じて制動や動きの補助を行えるような機能的な装具を処方する必要があると思われる。

 いずれにしても、患者の歩行能力に応じて関節の自由度をコントロールし、何の学習を促すか明確にしながら、安全と活動のバランスをうまくとれるような装具を処方する必要があると思われた。


 本日はここまで。


続きはまた次回。。。


2016年11月5日土曜日

脳卒中患者の姿勢コントロール(予測的な姿勢コントロール)

先日、近隣の大学で講義を行った。テーマは「脳卒中のリハビリテーション」で、主に評価・分析に必要な知識、それも姿勢コントロールについて話をさせて頂いた。学生に講義を行うことは初めてのことであったので、かなり緊張した(講義前の昼食は全く喉を通らなかった・・・)が、大変良い経験となった。

 今回は講義した内容の一部を紹介したいと思う。

●姿勢筋緊張と随意収縮●
 我々の姿勢や運動を制御する神経路は、内側運動制御系と外側運動制御系に二分される。(内側運動制御系は腹内側系、外側運動制御系は背外側系と呼ばれることもある。)これは、Kuypersが提唱した概念で、脊髄の内側を走行する経路と外側を走行する経路とで区別を行ったものである。これは、神経路の走行を区別しただけでなく、機能性の違いも区別されている。内側運動制御系は、脳と同側を下降し、両側の支配を行う。そして、主に体幹筋や近位筋を支配している。外側運動制御系は、脳と反対側を下降し、反対側の支配を行う。そして、四肢の遠位部を支配していると考えられている。そのため、内側運動制御系は主に姿勢筋緊張のコントロールを、外側運動制御系は主に随意収縮のコントロールを行っていると考えられる


 それでは、脳卒中片麻痺患者は主にどちらが障害されるだろうか?外側運動制御系は、脳と反対側を下降し反対側を支配するので、例えば、右の脳卒中になった場合、左の随意収縮の障害(これが一般的に片麻痺といわれるもの)を呈する。しかし、内側運動制御系は、脳と同側を下降し両側を支配するので、一部は障害されるかもしれないが、必ず残存する経路は存在する。つまり、片麻痺という随意収縮の障害を呈しても姿勢筋緊張のコントロールは可能というわけである。そのため、重度の片麻痺を呈しても、立つことや歩くことが可能となると考えられる。治療において、随意収縮の改善も重要な要素の1つであるとは思うが、我々理学療法士が、特に注目しなければならないものは、姿勢コントロールの改善であると思われる。


●皮質網様体脊髄路●
 内側運動制御系には、さまざまな神経路があるが、今回は皮質網様体脊髄路についての説明を中心に行いたいと思う。一般的に神経路の名称は、通過する組織の順番を示している。皮質網様体脊髄路であれば、皮質から網様体と脊髄を通過し、筋に作用する経路という事になる。また、経路に“皮質”がつく場合、皮質は物事を企画し、命令を出すところであるため、運動や姿勢のコントロールを自ら企画し、実行する神経路ということになる。そのため、皮質網様体脊髄路となると自ら企画し姿勢コントロールを行う経路、つまり、予測的な姿勢コントロールを行うための経路という事になる。ちなみに、皮質網様体脊髄路は、皮質網様体路と網様体脊髄路から成り、皮質網様体路は、網様体脊髄路に皮質で企画した内容を伝えるための経路である。

●皮質網様体路●
 皮質網様体路は、下記図に示すように走行する。以前は、ヒトの神経路がどのように走行しているか知り得ることが難しかったが、画像技術の進歩により簡単に知り得ることが可能となった。下記図は、拡散テンソル画像を利用したもので、この画像技術を使って、ヒトにおいて皮質網様体路が損傷されると、どのような症状が出るのか研究が進むようになった。その文献をいくつか紹介したいと思う。


 まずは、両側の皮質網様体路が損傷された場合、どのような症状が出るか調べたものについて。両側の皮質網様体路が損傷されると、末梢部の動きは比較的保たれているが、四肢の近位筋の筋力低下と歩行障害を呈したことが報告されている。


 また、同様の実験を二足歩行ができるサルで行ったものもある。この研究において、両側の補足運動野(内側運動制御系の起始部)の活動を不活性化すると、歩行障害だけでなく、立位姿勢の維持が困難となったと報告されている。この研究では、一側の補足運動野や一側の一次運動野の活動を不活性化する実験も行われている。結果、一側の一次運動野の不活性化では、つま先を引きずるような跛行を認める程度で姿勢保持や歩行は可能であったことや、一側の補足運動野の不活性化では、姿勢維持障害や歩行障害を認めなかったとされている(森大志・他:さる二足歩行モデルを用いた姿勢・歩行運動の制御にかかわる脳機能解明の試み.神経内科.2007)。サルの研究からも分かるように、姿勢コントロールは両側の脳からコントロールされており、両側の神経路の機能不全によって症状が大きく表れると考えられる
 ヒトにおいても、片側の皮質網様体路が損傷した場合の研究が行われている。この研究は、慢性期の脳卒中片麻痺患者を対象としたもので、対象患者は、皮質網様体路も外側皮質脊髄路も完全に損傷しているものであった。これらの対象者を歩行可能な群と歩行困難な群とに分け比較検討した結果、歩行可能な群は、損傷されていない側の皮質網様体路の神経線維量が有意に増加していることが分かった。つまり、歩行が可能となるかどうかは、損傷側の神経路がどの程度残存しているかや回復するかではなく、残存している神経路が損傷している神経路の活動を補うことができるか否かで決まるという事であると思う。脳卒中片麻痺患者の治療において、皮質網様体路がコントロールしている姿勢コントロール、それも、予測的な姿勢コントロールを改善することは重要な要素であると思われる。


●予測的な姿勢コントロール●
 予測的な姿勢コントロールは大きく分けて2通りある。それは、先行性の姿勢コントロールと随伴性の姿勢コントロールである。先行性の姿勢コントロールは、立位姿勢で手や足を前に上げることを想像してもらいたい。手や足を前に上げると、手や足の重さ分、重心は前方に偏位してしまう。これがうまくコントロールできなければ、前方に転倒してしまうことが容易に想像できるだろう。これを防ぐために、我々は動作に先行して、姿勢をコントロールしている。これは、手や足の重さ分、体が前に偏位することを予測し、自ら姿勢コントロールを企画・実行することによって成り立っている。下記図は、足を一歩前に出す際の足圧中心(COP)と重心(COG)の変化を示した図である。下記図を見ると、足を一歩前に出す前、重心が前方に偏位していく前に足圧中心が支持側の後方に変化していることが見てとれる。


 このように、先行性の姿勢コントロールは、動作によっておこる重心の変化を予測し、事前に支持面を変化させ、安定化を図るものである。
 もう一つは随伴性の姿勢コントロールである。随伴性の姿勢コントロールは動作と同時に行われる予測的な姿勢コントロールである。これはどういったものか。例えば、ペットボトルをとるために前方に右手をリーチするとする。この場合、先行性の姿勢コントロールによって支持面を左後方へ変化させ、左側の安定化が図られる。しかし、これだけではペットボトルをとることは困難である。それは、右手が前方に伸びていくにしたがって、それを支える右側の肩甲帯や胸郭、体幹への負担も増加するためである。このコントロールが上手くいかなければ、右の体幹は屈曲してしまい、右手を前方にリーチすることは困難となる。このように、随伴性の姿勢コントロールは、運動によって生じる負担を事前に察知し、運動に合わせてコントロールしていくものになる。先行性の姿勢コントロールは主に支持側となる運動肢と反対側の姿勢コントロールを行っており、随伴性のコントロールは主に運動側の姿勢コントロールを行っていると言われている。
 これらの予測的な姿勢コントロールが、どのような神経路によって支配されているか研究されたものを下記に示す。この研究結果より、先行性の姿勢コントロールは主に皮質橋網様体脊髄路によってコントロールされており、随伴性の姿勢コントロールは主に皮質延髄網様体脊髄路によって支配されていることが明らかとなった。また、皮質橋網様体脊髄路は、脳と同側を下降し主に同側を支配していること、皮質延髄網様体脊髄路は、脳と反対側を下降し主に反対側を支配していることが明らかとなった。


 これを脳卒中片麻痺患者で考えてみる。非麻痺側の上肢や下肢を動かす場合、先行性の姿勢コントロールを行うのは支持側となる麻痺側である。この場合、姿勢や運動の企画を行う脳は、損傷されていない脳であるため、麻痺側の先行性の姿勢コントロールを行うための神経路は損傷されていないと思われる。慢性期脳卒中片麻痺患者の歩行可能なものと歩行困難なものを比較した研究で示されている通り、残存している皮質網様体路を活性化することが、歩行獲得に重要な要素の1つである。麻痺側の姿勢コントロールを行いながら、非麻痺側のリーチやステップ動作などの活動を行うことは、残存している皮質網様体路の活性化につながり、歩行再建に向けたアプローチとなることが考えられる。
 片麻痺患者の先行性の姿勢コントロールを調査した研究では、随意性が保たれている患者(この研究では足関節の背屈が可能なもの)においても反応時間の遅延が起こることが報告されている。


 そのため、脳卒中になる前と同じタイミングで動作を行うと、代償的な姿勢戦略となることが予測される。治療介入においては、先行性の姿勢コントロールに注目し、動作開始前からの姿勢コントロールの方法を再学習していく必要があると思われる。

以上、講義を行った内容の一部の紹介を行った。
ところどころ抜粋をしながらまとめたため、一部つながりがない部分もあるかもしれないが・・・。


本日はここまで。

続きはまた次回。。。

2016年10月1日土曜日

課題指向型アプローチ

 今度院内の勉強会で課題指向型アプローチの講義を行う事となった。
 今回は、その講義に向けてまとめたものを紹介したいと思う。

●リハビリテーションの歴史●
 中枢神経疾患に対するリハビリテーションモデルは、科学の進展によって変化を続けている。最初のパラダイムシフトは、神経発達学(反射・階層理論)に基づくアプローチとファシリテーションテクニックである。この変化により、従来、筋再教育に基づくリハビリテーションとして、一つの筋や関節の動きのみに目を向けていたところから、中枢神経系にも目を向けたアプローチが展開されるようになった。もう一つのパラダイムシフトは、システム理論と運動学習に基づくアプローチである。この変化により、中枢神経系の働きと身体の動きだけでなく、環境下における行動についても理論的に考えられるようになった。システム理論と運動学習に基づくアプローチは課題指向型アプローチを称され、代表的なものとしては、Shumway-Cookによる「システムアプローチ」やCarr&Shepherdによる「運動再学習プログラム」、CI療法などがある。


●反射・階層理論●
 反射・階層理論は、反射の発達過程における消失と出現という観点から運動コントロールを説明したものである。発達の過程において、原始反射が消失して、立ち直り反応が出現。立ち直り反応が消失して、平衡反応が出現する。この消失と出現は上位中枢が下位中枢を抑制することで成し遂げられているという理論である。この理論に基づき、中枢神経疾患の患者は、上位中枢の障害により下位中枢への抑制が利かなくなり、消失していた反射・反応が出現すると考えられた。
 そのため、この理論に基づく介入は、異常な反射(異常な運動パターン)を抑制し、正常な運動がコントロールができるよう誘導するように組み立てられており、運動レベルを下位から上位へ転化させることを目標としている。




●システム理論●
 システム理論は、ニコライ・ベルシュタインが提唱した理論で、運動が以下の4つのレベルに分類されている(①筋緊張のコントロール②筋‐関節の協調運動③空間での動作④行為)。
 この理論の特徴は、我々が行う巧みな運動・行為は、筋‐関節の協調的な動きのみで成立するのではなく、その動き方は、環境や課題によって変化するということである。そのため、空間での動作や行為は、その課題や環境下において、効率的なものが選択されており、下位を抑制するのではなく、より良いものを強化すると考えられた。
 この理論に基づいた介入は、協調的な動きを一部失っても、空間での動作や行為は、練習や経験によって、新たな方法を選択できるという理論に基づいており、さまざまな場面での練習や経験を重視している。





●神経発達学(反射・階層理論)の問題点●
 運動再学習プログラムを示している「脳卒中の訓練プログラム」という書籍の中で、神経発達学(反射・階層理論)の問題点として次のスライドに示したものが記されている。



 また、システム理論に基づいた介入(運動再学習プログラム)と反射・階層理論に基づいた介入(ボバースアプローチ)を比較・検討した研究において、運動再学習プログラムで治療を行った方が、在院日数の有意な短縮と運動機能の有意な向上を認めており、ADLにおいても有意差を認めないが高値を示したことが報告されている(Langhammer Bら 2000)。
 一方、ボバースコンセプトにおいては、Lennon Sらの研究にて、ボバースコンセプトの1990年以降の変化について報告されている。その報告において、現在の成人脳卒中患者に対するボバースコンセプトでは反射・階層理論は、利用されなくなっており、課題指向型アプローチが重要な要素となっていることが報告されており、ボバースコンセプトも課題指向型アプローチの介入方法の1つであるという考え方に変化していると思われる。詳しくはこちら

●運動再学習プログラム●
 運動再学習プログラムは①課題の選択②課題分析③課題の練習④日常生活の転移の4つの要素で構成されている。特に、①課題の選択④日常生活の転移は、どの課題指向型アプローチにおいても重要とされており、CI療法においても麻痺手の集中訓練と課題指向型アプローチと合わせて、アプローチで獲得した麻痺手の機能を生活活動に転移するための行動戦略(Transfer package)が重要な要素として挙げられている。この概念において、麻痺手を使うことがなぜ必要か?どのような実生活の動作で麻痺側上肢を使用するか?という課題を明確化することが求められており、実際に利用できているかどうかモニタリングする(日常生活に転移できているか確認する)ことが求められている。詳しくはこちら
 このように、課題の分析方法や練習方法は、各介入方法によって異なるが、①課題の選択と④日常生活への転移に関しては、重要な要素であることが分かる。以下に運動再学習プログラムの詳細ついて述べたいと思う。

①課題の選択
 治療で選択される課題は、意味があることが重要であり、本人にとって興味のそそるものでなければならず、また、挑戦的(困難で取り組み甲斐があるもの)であり、漸次、難易度が調整され、能動的な関わりを伴うものである必要がある。興味のない(本人にとって重要でない)課題においては、学習が進みにくいという報告もあるため、積極的に自ら挑戦できる課題を選択する必要がある。

②課題分析
 課題分析は、患者を観察し、動作に必要な要素(本質的要素)と患者が示す動作との比較を行い、欠けている要素について分析を行う。課題やそれに関する問題は、解剖学や生体力学、生理学、行動的要素全般にわたり分析を行うことが必要である。また、運動上の問題を患者自身が理解し、何を練習し、何を達成したらよいか理解してもらう指導も重要で、理解を促すために必要に応じて患者にも分析に参加してもらう。

③課題の練習
 全体練習を中心に行うが、必要に応じて各要素(欠けている要素)を部分練習として行う。部分練習を行った後は、必ず全体練習も行う。また、練習を行う際はa.目標と方法を明確化することb.難易度の調整(自由度の制限)が重要となる。
a.目標と方法の明確化
 全く不適当な運動や行為を練習している場合、学習を阻害し、悪い習慣を身につけてしまう場合がある。そのため、目標はなんであるか、そのためにはどのように行う必要があるか明確にしておく。患者の理解度に応じて、口頭指示デモンストレーション徒手的誘導(Handling)を利用する。
b.難易度の調整(自由度の制限)
 難しい課題に挑戦する際に、運動の一部を制限する必要がある。これにより、患者がコントロールしなければならない自由度は減少し、目標達成に関する筋活動の問題に専念することができる。これは、環境設定や徒手的誘導(Handling)により実施する。コントロールが改善すれば、運動の制限を減らしていく。その結果、患者がコントロールしなければならない自由度が増加し、難しい課題を達成することができる。
 例えば、寝返り動作であれば、臥位から開始するのではなく、クッションなどを詰め45°側臥位から開始したり、起立動作であれば、高座位から開始し、徐々に低い位置から起立ができるよう調整を行う。また、体幹介助での歩行訓練やBWSTTは、体幹のコントロールを制限し、下肢の運動に専念することができ、装具の利用は関節の自由度を制限し、股関節や体幹のコントロール、実際の歩行動作に専念することができる。練習を行う際は、何を制限し何を学習してもらうか明確にしておく必要がある。



●日常生活への転移●
 患者が学習している内容をいつでも強化し、練習を与え、それを習熟させ、さらに練習で学習したことをADLに転移する機会を与えることが重要である。そのためには、a.練習の一貫性b.自己管理下での練習・環境づくりが重要となる。
a.練習の一貫性
 セラピストとの治療以外の時間に、練習した内容が実施できないと治療効果が発揮されない。また、動作指導の方法にそれぞれ違いがあったり、矛盾があったりするのも同様で、患者に混乱をもたらすだけでなく、効果的な運動を再獲得する上で妨げとなってしまう。そのため、練習したものを繰り返し練習できるよう、病棟スタッフや家族にどのように指導しているか教育する必要がある
b.自己管理下での練習・環境づくり
 日常生活へ転移させるためには、回復に対して受動的に待つのではなく、積極的に参加できるよう促す必要がある。そのため、患者の回復への意欲が高まるような環境づくりが必要となる。
 例えば、セラピストとの治療の時間や自主練習の時間、食事、入浴などの時間がいつであるかスケジュール管理を行い、自分で練習できる時間を明らかにする。また、1週間の間にどの程度まで目標を達成するか、1ヵ月後や退院までに実生活でどのように動けるようになるかを明確にするなどのスケジュール・目標管理が必要となる。また、自主練習ができる環境と意欲をかき立てる環境づくりも大切である。


以上、課題指向型アプローチについてのまとめを行った。介入方法や治療技術に関しては、さまざまな意見があると思うが、患者を治療介入する際には、課題の選択と日常生活への転移が重要となると思う。この2つの要素を明確にし、これができる教育・環境づくりを行えば、ある程度どの治療方法を選択してもよい結果を患者に提供できると思う。


本日はここまで。

続きはまた次回。。。
●参考にした書籍●